国税局課税第一部の審理課の業務は、どのようなものですか?

税務調査

東京国税局課税第一部の審理課が受け持つ業務は、事前照会に対する文書回答手続き、同業者団体等からの照会に対する文書回答手続きです。

組織規則によれば、課税第一部の審理課の業務内容として「内国税の賦課に関する法令の適用に関すること」を所掌すると定められています。私たち納税者にとって大切な文書回答の事務を担っています。

審理課の受け持つ業務として、事前照会に対する文書回答手続きと、同業者団体等からの照会に対する文書回答手続きが挙げられます。国税庁による説明は、次の通りです。

[文書回答制度]
全国の国税局においては、納税者サービスの一環として、個別の取引等に係る税務上の取扱いについての照会に対する回答を文書により行うとともに、同様の取引等を行う他の納税者の予測可能性を高めるために、その照会及び回答の内容を国税庁ホームページにて公表しています。
また、同業者団体等からの照会(その構成員が行う取引等に係る税務上の取扱いについての照会に限ります。)についても、上記と同様に、文書による回答を行うとともに、その照会及び回答の内容を国税庁ホームページにて公表しています。
出典:国税庁「事前照会に対する文書回答等について>ご存知ですか? 文書回答制度」国税庁ホームページ、平成23年4月、http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sonota/8292.pdf(アクセス:平成25年6月17日)。

社長のあなたが、後に行う予定の取引に関する文書回答を当局に求め、有利な回答があったとします。その場合、回答の通りに経理処理を行えば、後の税務調査等で全てがそのまま認められるものなのでしょうか。
事前に心配だった部分を尋ね、回答を得た通りの経理処理をしたのだから、当然認められると社長は考えるかもしれませんが、現実にはそのようにならない場合もあります。
照会者が照会したいと思う事項の全てを当局に説明することができ、回答する当局がその全てを理解した上での判断をしたのなら、後に問題となることはないのかもしれません。しかしながら、両者とも、あるいはどちらか一方が説明や理解をする能力に欠けるところがある場合には、正しく判断されることなく、調査で否認されるケースもあり得ます。そのような例は少なくないのが現実です。そのことに関する国税当局の説明は、次の通りです。

(問2)文書回答は、どのような効力をもつものなのですか。
(答)我が国は申告納税制度を採用しており、申告・納税は納税者の皆様が自主的に行っていただくものです。このような申告納税制度の下において、文書回答は、納税者サービスの一環として、他の納税者の皆様に予測可能性を与え、適正な申告・納税をしていただくための一助となることを目的として実施しているものです。
文書回答は、照会に示された事実関係に基づき、その時点の法令に則して、その範囲内での国税当局の判断を示すものであり、照会者の申告内容等を拘束するものではありません。
また、文書回答は、あくまで照会者から示された事実関係を前提としたものですから、その示された事実関係が実際の取引等と異なっていたり、新たな事実が生じたような場合には、回答内容と異なる課税関係が生じることがあります。
したがって、文書回答どおりの申告を行ったとしても、例えば、法令の改正等があったり、調査による事実確認の結果、実際の事実が照会に係る事実と異なること等が判明したような場合には、国税当局として別の判断を行い、課税処分等が行われる可能性があります。
出典:国税庁「事前照会に対する文書回答等について>よくあるご質問とその回答」国税庁ホームページ、http://www.nta.go.jp/shiraberu/sodan/jizenshokai/bunsho/gaiyo02/04.htm(アクセス:平成25年6月17日)。

こういう問題が生じるのは、文書回答を担う部署と調査を担う部署が違うためでしょう。部署が異なると、当然担当者も異なります。そのことにより、事実関係の把握の仕方等が違ってくるのではないでしょうか。提示のあった事実関係を基として一定の回答を行うのにとどまる担当者の見方と、提示のあった事実関係が、その通りなのか、その裏に真実が隠れていないのかを見極めようとする調査担当官の見方は、同じはありませんから、その結果、異なる判断が下されて、課税処分がなされてしまいます。
そこで、真実はどこにあるのかが大切になってきます。そして、それは社長の胸の内にあるといえます。社長の頭の中に全てがありますので、頭の中にある通りに経理処理を行うことが、会社に最善最良の結果を招くこととなります。これが税務調査の正しい受け方、上手な受け方だと考えられます。
なお、会社、課税当局、税理士、関係する全ての人々にとって、事実関係を的確に分析する能力、正しく判断する能力、分かりやすく説明する能力を磨くために、勉強し、知識と経験を深めることが大切です。