国税局の調査部のうち、もっぱら税務調査を実施するのは、どの部署ですか?

税務調査

東京国税局調査部を例に取ると、もっぱら税務調査を実施する部署は、調査第一部の特別国税調査官と調査第二部~調査第四部の統括国税調査官です。

特別国税調査官には、統括主査、主査、調査官が置かれていて、4~5名でチームが編成されています。チームの担当の業種別にK及びA~Fの7グループに分類され、それぞれのグループに4~6班、併せて35班が設置されています。
調査の対象は、製造業・金融業・卸売業・小売業等の各々の業種の法人のうちで、売上金額や会社の規模等がトップレベルである法人、例えば、製鉄業については新日本製鐵・JFE等、海運業については日本郵船・商船三井、電機業界については三菱電機・東芝・日立製作所等です。
国税の事務年度は、毎年7月にスタートします。事務年度スタート早々に調査に着手し、半年間を費やして調査しますので、12月に調査が終わります。その後、2件目の調査事案には1月に着手し、3月に調査が終わります。3件目については4月に着手し、6月に終わります。1年間はこうしたサイクルで過ぎていき、年間に法人3社を調査することになります。
著名で大きな規模の法人の税務調査であるがゆえに社会的にも多大な影響を与え、調査官も大変な苦労をします。また、調査への対応をする各々の社の税務調査対応チームの方々にもかなりの気苦労があるのではないでしょうか。

統括国税調査官は部門を形成し、統括主査1~2名、主査2~4名、調査官5~8名が配置されていて、併せて12~13名となっています。通常は、主査1名、調査官2名の併せて3名の体制で調査をします。統括主査は、全体をまとめる部門の要として存在しています。部門のトップである統括国税調査官は、税務署長級です。このような統括官部門は、調査第二部には1~16部門、調査第三部には21~36部門、調査第四部には41~56部門というように、併せて48部門が設置されていて、建設業・卸売業・電機・金融証券等の業種別に分けられています。
同一業種の法人を順次調査していきますから、業種固有の問題点といった当該業種に係るさまざまなことに通じることとなります。
調査期間に関しては会社の規模によっても異なりますが、通常は2~3週間、会社に臨んで帳簿調査を実施し、反面調査等を行いながら、最終的に問題点を提示して修正申告の提出を促すまでにおおよそ3ヶ月を要しています。
現実の調査は次のように行われます。調査の日程の告知のみならず、調査日までにそろえておいてほしい書類が一覧表となり、会社に送付されます。会社のパンフレット、組織図、内線表、配席図というような外観的なもの、業務内容に関連する取締役会議事録や稟議書綴り、総勘定元帳、会計データを見るためのパソコン、プリンタといったものも要求されることとなります。
1日目については、全般的な会社の概況に関して経理部の担当者から聴取します。2日目以降は、調査官はそれぞれの事業部の責任者からその事業部の業務内容全体に関わるレクチャーを受け、全般的に理解しながら調査のポイントを浮き彫りにしていきます。説明する側に関しては、本当に遂行している業務内容の概略を説明し、当局の質問に対して淡々とした回答を行うという心構えが必要でしょう。3日目からは、帳簿調査を行います。稟議書や各種議事録により全体像を把握し、要調査項目の絞り込みをします。担当者が逐次呼ばれ、問題点が徐々に明白になって、不審点が存在すれば厳しく追及を受けます。
会社側の調査官に対する応答が、以後、非常に難しくなります。ここまでは単に説明するのみでよかったのですが、調査官の頭の中には一定のストーリーができていますから、誤解を生まないように説明することが重要です。この時期には、大したことはないと思って発言した一言が、後に大きな意味に捉えられてしまうということがあります。
しかし、嘘をつけばいいというわけではありません。説明をごまかしたり、嘘をついたりしたとしても、露見してしまうものです。ならばどうすればいいかといえば、信頼できる税理士に相談することをお勧めします。
税務的な視点での専門的な説明を確実に行うことができなかったがゆえに、元来意図するところが当局には全く伝わらず、当局の仮説に乗ってしまい、取引事実が自分自身で提示しようとしている真実から相当離れた結論となってしまう場合が時々あります。会社の経理担当者が、自身で何をいっているのか、何をいいたかったのかが分からないという状況になって、おかしいなと思いつつ、当局の結論に合わせてしまいます。事実関係、取引関係を分析して、当局に対し、その意味するところの説明を法令や通達に則して行う能力が必要になります。

そのようにして現場における調査が終わり、修正申告書を提出し、納税を行えば、一連の調査が終了したということになります。
終了したから安堵するというのではなく、そこからが社長の出番だといえるでしょう。会社の取引のどういう点が問題となったか、どこがいかに悪かったかを的確に分析することが重要です。同じ失敗を避けるため、管理・監督を十分に行わなければなりません。これが税務調査の上手な受け方です。

なお0、調査審理課は、調査部の調査について大きな影響力を持っていて、調査が終わった後に、調査官が起案した決議書を審理します。決議書というのは、修正申告書に書かれた勘定科目の内容の課税根拠を提示している書類のことです。法令や通達に従って課税を行うべき項目であるということの理由が明記されていて、上司の決裁を受けるために必要となる書類です。決議書の審理を行うだけでなく、調査の途中で調査官から問題点に関わる相談を受けて、課税を行うべきかどうかを判断します。審理課の見解は、部内のみならず、対外的にも大きな権威を有していて、審理課が了承しなければ課税関係の解決はないといわれているほどです。